紀勢東線を走る「DD51重連貨物」を撮ろうとお誘いをいただいた。岐阜に住んでいた頃ですら、隣の三重県は伊勢志摩まで。紀勢は、気持ちも距離も遠い存在の「南海の鉄路」であったが、皆さんからの事前情報でバーチャル旅行を楽しみつつ、徐々に関心が高まっていった。

 そして迎えた撮影日前夜に同好の3名の皆さまと亀山のホテルに集結。翌日の撮影プランについてあれこれと愉しい談義を経て「一発目は駅バルブ!」と結論。暑くとも夏空を期待して早めに就寝したが、当日は小雨模様の涼しい朝、意気消沈のスタートとなってしまった。それでも、山あいの水田は夏の緑、風格あるトンネルと渓谷に美しい鉄橋、峠を越えてリアスの入り江、隘路を下れば海辺の集落と棚田のある懐かしさ漂う風景など、劇的な変化に富む沿線に気持ちが高揚していった。帰りの南紀乗り鉄からのワイドビューで全線是撮影地と言っても過言ではないと実感した。

 比肩すべきものではないが、「只見の完成美」や「岩泉の自然体の素朴さ」と同様、再訪の魔力が漂う紀勢‥。また出会ってしまった郷愁鉄路。そして重連DD51。首都圏の紙需要充足の一翼を担うこの昭和の時代の象徴は今でもバリバリの現役、撮る者を惹きつけるカリスマ的存在感がある。田舎特有の濃いめの醤油味の「めはり寿司」も美味かった。近々の再訪を期して敢えて今回は「序章」と位置づけた ⇒
 ここから

 
撮影記へ TOPへ